「宗像も福津も人気の地域だと聞くから、実家もそれなりに売れるはず」
半分は当たっていて、半分は外れています。
宗像市と福津市は隣り合っていて、どちらも福岡市と北九州市のちょうど中間。同じような立地に見えます。ところが実家の話になると、この2市はまったく違う事情を抱えています。しかも同じ市の中でも、実家が建った年代によって話がひっくり返ります。
福津市と宗像市で、実家問題の中身が違う
まず数字から。2025年4月時点で、宗像市の人口は約96,600人、福津市は約69,200人です。
福津市は、ここ10〜20年ずっと人口が増え続けてきた地域です。2018年には人口増加率が東京都中央区に次いで全国2位という時期もありました。福間駅の周辺を中心に区画整理が進み、子育て世代が流入し続けています。
一方の宗像市は、市全体としては落ち着いた規模を保ちつつ、地区によって事情が分かれます。とくに大きいのが日の里地区です。
日の里団地は1971年に竣工した、九州で初めての大規模な郊外住宅団地です。計画戸数は5,000戸、面積は217ヘクタール超。当時の福岡・北九州の勤め人が、こぞって家を持った場所でした。
その団地が、いま築50年を超えています。宗像市はUR都市機構と連携して日の里地区の団地再生に取り組んでおり、団地の跡地を戸建てエリアに造り替えたり、住棟を丸ごと生活利便施設に改装したりといった動きが実際に進んでいます。
つまりこの地域では、「宗像だから」「福津だから」で実家の価値は決まりません。決めるのは、その家がいつ・どのエリアに建ったかです。
令和7年国勢調査では、2市の違いが「人口」より「世帯」に出ました
この記事を最初に公開したあと、福岡県から令和7年国勢調査の集計結果(速報)が公表されました。調査の基準日は令和7年10月1日、公表は令和8年5月29日です(2026年9月17日に確認)。
冒頭の章では、福津市が人口を伸ばしてきた地域であること、宗像市が規模を保ってきた地域であることを書きました。その見立てが最新の調査でどうなったかを、ここで数字にして確かめておきます。結果からいうと、2市の差は人口よりも世帯の数字のほうにはっきり出ていました。そして実家をどうするかという話には、人口より世帯のほうが効いてきます。家は人の単位ではなく、世帯の単位で買われたり借りられたりするからです。
| 市町 | 人口 | 人口の増減率 | 世帯数 | 世帯数の増減率 | 1世帯当たり人員 |
|---|---|---|---|---|---|
| 宗像市 | 97,045人 | △0.05% | 43,077世帯 | +4.97% | 2.25人 |
| 福津市 | 69,064人 | +3.03% | 28,083世帯 | +5.84% | 2.46人 |
| 古賀市 | 58,350人 | △0.74% | 24,559世帯 | +3.98% | 2.38人 |
| 新宮町 | 32,195人 | △2.22% | 12,327世帯 | △1.14% | 2.61人 |
| 福岡県計 | 5,081,879人 | △1.04% | 2,401,053世帯 | +3.35% | 2.12人 |
宗像市と福津市は、古賀市・新宮町とあわせて「宗像・糟屋北部圏域」という同じ圏域に入ります。福岡県内の15の圏域のうち、人口が増えたのは福岡市圏域・糸島圏域と、この宗像・糟屋北部圏域の3つだけでした。2市はその数少ない側にいます。
同じ「世帯が増えた」でも、中身は正反対でした
表の右半分を見ると、宗像市も福津市も世帯数が増えています。増加率だけ見れば宗像市+4.97%、福津市+5.84%で、大きな差はないように見えます。
違うのは、その世帯の増え方です。
- 福津市は、人が増えて世帯が増えました。人口は2,031人増(+3.03%)。この増加率は福岡県内で3番目に高く、増加した人数そのものも県内3位です。世帯は1,549世帯増えています。
- 宗像市は、人がほとんど増えていないのに世帯だけ増えました。人口は97,045人で、前回から50人の減少(△0.05%)。ほぼ横ばいです。ところが世帯は2,039世帯増えています。
市に住んでいる人の数がほぼ変わらないまま、その人たちが入る世帯の数だけが2,000ほど増えた。ここから読み取れるのは、宗像市で増えた世帯の多くが、外から新しく入ってきた世帯というより、もともと市内にいた人が別々の家に分かれて住むようになった分だろう、ということです。統計から言えるのはここまでで、一人ひとりの事情まではわかりません。ただ、その傾向は1世帯当たりの人員にも表れています。
宗像市の1世帯当たり人員は2.25人。この圏域の4市町(宗像市・古賀市・福津市・新宮町)のなかでいちばん小さい数字です。福津市は2.46人、新宮町は2.61人ですから、隣り合っていても世帯の大きさがそろっていません。
この数字は「次にこの家に住む人」の話です
実家をどうするか考えるとき、この違いは次のような形で効いてきます。
福津市の実家——世帯が増えていて、しかも1世帯2.46人と、この圏域では大きめです。ある程度の人数がいる世帯が入ってきていると読めます。戸建てをそのままの形で手放す場合でも、相手の想定と大きくずれにくい地域だといえます。
宗像市の実家——世帯は増えているので、「借りる人も買う人もいない」という地域ではありません。ここは大事なところです。ただ、増えている世帯は小さい。4つも5つも部屋がある家をそのままの形で出すと、相手が想定している暮らしの大きさと合わないことがあります。この「広さをどう扱うか」という論点については、本記事の「福津市と宗像市で、実家問題の中身が違う」の章もあわせてご覧ください。
参考までに、同じ圏域の新宮町は人口も世帯もどちらも減っています(人口△2.22%・世帯△1.14%)。圏域全体では人口+0.32%・世帯+4.23%ですから、圏域の平均を見るだけでは個々の市町の事情はわかりません。「宗像だから」「福津だから」で決まらないという冒頭の話は、世帯の数字で見ても同じでした。
なお、ここで挙げたのはあくまで地域全体の傾向です。同じ市内でも駅からの距離や建った年代によって事情は変わりますので、この数字だけでご自身の実家の行き先が決まるわけではありません。年代とエリアによる違いは、次の章に整理しています。
実家が建った年代で、取れる選択肢が変わります
ざっくり3つに分かれます。ご実家がどれに近いか、当てはめてみてください。
1990年代以降・駅に近いエリア
福間駅周辺や、東郷駅から近い新しめの住宅地。ここは買い手が途切れにくく、比較的そのまま売却の話が進みます。土地も建物も評価がつきやすい層です。
1970〜80年代の団地・分譲地
日の里団地や、同時期に開発された郊外の分譲地。建物の価値はほとんど残っていないと考えたほうが現実的です。ただし土地の広さと接道条件がよければ、更地にして売る道がしっかりあります。
日の里のように再生事業が動いているエリアでは、周辺の環境が今後変わっていく可能性もあります。「古い団地だから終わり」と決めつけずに、まず現状の値段を知ることをおすすめします。
市街化調整区域・海側や山側の集落
いちばん判断が難しい層です。建て替えができるかどうかで価値が大きく変わります。ここは自己判断が危ないので、早めに専門家に見てもらったほうが結果的に早く進みます。
この地域ならではの「貸す」という選択肢
宗像・福津は、売る以外の道が現実的に検討できる数少ない地域です。
理由は単純で、借りたい人がいるからです。子育て世代の流入が続いていること、教育大学をはじめ学生の需要があること、そして宗像大社をはじめとする観光の人の流れがあること。この3つが重なっている地域は、九州でもそう多くありません。
ただし、貸すには修繕費が先に出ていきます。回収できる見込みがあるかどうかが分かれ目です。判断材料は空き家を賃貸に出すメリット・デメリット|管理の手間はどのくらい?に整理しています。
空き家バンクは「名義が片付いていること」が前提です
ここは見落とされがちなので、はっきりお伝えします。
両市とも空き家バンクの制度があります。
- 宗像市:宗像市空き家・空き地バンク(空き地も対象。市と協定を結んだ宅建業者が仲介します)
- 福津市:福津市空き家バンク(空き地は対象外。傷みが激しい家屋でも登録できます)
ただし、登録条件のうち名義に関する定めは、2つの市で書かれ方が違います(2026年9月18日に両市の公式ページで確認)。
宗像市は、空き家・空き地バンクの注意事項として「売買・賃貸が困難な物件(所有者の意思が確認できない。相続登記ができない等)については、ご利用をお断りすることもあります」と書いています。
福津市は、それに加えて申請できる人の範囲まで書いています。
- 相続登記が済んでいない空き家は断られることがある
- 所有者が認知症などで意思判断できない場合は、成年後見人以外は申請できない
- 物件の所有者本人からの申請に限る(家族でも代理申請はできない)
書き方の細かさは違いますが、どちらの市も「所有者の意思が確認できること」と「相続登記が済んでいること」を前提にしている点は共通しています。
つまり名義が片付いていないと、制度に乗ることすらできません。「まず空き家バンクに登録してみよう」と思っても、その手前で止まってしまうご家族が実際にいらっしゃいます。
登記の状況は法務局で確認できます。何から手をつけるか迷ったら、ここが最初です(相続登記の義務化とは?期限・過料の条件と今からやるべきこと)。
相場を自分で調べる3つのステップ
無料で、今日中にできます。
ステップ1:国土交通省「不動産情報ライブラリ」で実際の取引価格を見る
国が公表している実際の成約価格のデータベースです。不動産情報ライブラリで市区町村・地区・築年数を絞り込めます。売り出し価格ではなく「実際に売れた値段」なので、いちばん実態に近い数字が分かります。
ステップ2:ポータルサイトで「いま売りに出ている物件」を見る
SUUMO・HOME'Sなどで、実家と同じ校区・近い築年数の物件を探します。ステップ1が「過去に売れた値段」、ステップ2が「今の売り出し価格」。この2つを見比べると幅が見えてきます。
ステップ3:固定資産税の納税通知書を確認する
毎年届く通知書に「固定資産税評価額」が載っています。土地の実勢価格はこの評価額のおおむね1.1〜1.2倍程度が目安とされることが多いですが、あくまで参考値です。
この3つで分かるのは「だいたいの幅」です。とくにこの地域は、同じ市内でも年代とエリアで差が大きく出ます。最終的には現地を見ないと分かりません。
まず何から手をつけるか
順番に迷ったら、この3つからです。
- 名義を確認する:登記簿上、実家が誰の名義か。空き家バンクを使うにしても売るにしても、ここが出発点です
- 建った年代とエリアを整理する:上の3分類のどれに当たるか。ここで取れる選択肢が変わります
- 家族で一度、選択肢を並べて話す:売る・貸す・活用する・保有し続ける、を全部テーブルに載せる
この3つが済んでいれば、専門家に相談したときの話の進み方がまったく違います。
まとめ:市の名前ではなく、家の年代で考える
宗像市・福津市の実家は、九州の中では恵まれた条件にあります。人が集まり続けている地域で、売る道も貸す道も現実的に検討できます。
ただし「宗像だから」「福津だから」という括りでは判断できません。1970年代の団地と、駅前の新しい住宅地では、まったく別の話になります。ご実家がどちらなのかを見極めるところから始めてください。
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そして私たちは不動産会社ですが、だからこそ「売らないほうがいい実家」があることも知っています。売却ありきのご提案はいたしません。
よくある質問
Q. 宗像市・福津市の実家は「地域」より何で判断すべきですか?
A. 市の名前ではなく「建った年代とエリア」で判断するのが実態に近いです。1990年代以降の駅近エリア、1970〜80年代の団地・分譲地、市街化調整区域の集落とでは、取れる選択肢がまったく異なります。
Q. 実家を売らずに貸すという選択肢はありますか?
A. あります。宗像市・福津市は人口が集まり続けている地域のため、売却だけでなく賃貸に出す選択肢も現実的に検討できます。
Q. 空き家バンクに登録するための前提条件はありますか?
A. あります。空き家バンクへの登録は「名義が片付いていること」が前提です。相続登記が済んでいない場合は、まずそこから進める必要があります。
Q. 相場を自分で調べるにはどうすればいいですか?
A. 3ステップで調べられます。①国土交通省「不動産情報ライブラリ」で実際の取引価格を見る、②ポータルサイトで売り出し中の物件を見る、③固定資産税の納税通知書を確認する、の順です。
Q. 宗像市は人口が減っていないそうですが、実家は売りやすいのでしょうか?
A. 人口がほぼ横ばいで、世帯数も増えていること自体は、悪い材料ではありません。ただ令和7年国勢調査(速報)で見ると、宗像市で増えているのは小さい世帯のほうで、1世帯当たり人員は2.25人と圏域の4市町でいちばん小さくなっています。そのため「買う人がいるかどうか」よりも「その人にとってこの家の広さが合うかどうか」のほうが論点になりやすい、という読み方ができます。年代とエリアによる違いは本文の「実家が建った年代で、取れる選択肢が変わります」の章に整理しています。
Q. 国勢調査の人口と、市のホームページに載っている人口が違うのはなぜですか?
A. 数えた時点と数え方が違うためで、どちらかが誤っているわけではありません。国勢調査は令和7年10月1日時点で実際にそこに住んでいる人を調べたものです。市のホームページによく載っているのは、住民基本台帳をもとにした毎月の数字で、基準日も方法も別のものになります。なお、この記事で引用しているのは速報の数字です。福岡県のページには「確報値は令和8年9月に公表される予定です」と記載されています(2026年9月17日確認)。
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