「空き家のままでも、固定資産税さえ払っていれば、役所から何か言われることはないのでは」――そう考えている方もいるかもしれません。

「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下「空家法」)には、市町村が空き家の所有者等にとれる措置が書かれています。このページでは、空家法の条文を順番に読みながら、空き家の状態が改善されない場合に、市町村から所有者等へどんな段階で何が届きうるのかを整理します。あわせて、福岡市の空き家バンクの登録の要件に、空家法の「特定空家等」が出てくることも紹介します。

空き家を放置したときのリスク全般は空き家を放置するとどうなる?リスクと対処法を分かりやすく解説で、固定資産税との関係は特定空家に指定されると固定資産税が6倍に?仕組みと回避する方法で扱っています。このページでは税の話には入らず、手続きの順番だけを追います。

条文は、e-Gov法令検索の空家等対策の推進に関する特別措置法(令和8年法律第27号による改正を反映した、2026年9月3日施行のもの)で2026年11月2日に確認しました。

空家法に出てくる2つの区分

空家法には、市町村が措置をとる対象として、「特定空家等」と「管理不全空家等」の2つの区分があります。

特定空家等(第2条第2項):条文では、次の状態にあると認められる空家等とされています。

そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

空家等対策の推進に関する特別措置法 第2条第2項

管理不全空家等(第13条第1項):適切な管理が行われていないことにより、そのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空家等です。

管理不全空家等は、市町村長が認めるものとされています(第13条第1項)。特定空家等に対する第22条の措置も、市町村長がとるものです。

条文の順番で見る、市町村から届きうるもの

空家法の条文に書かれている措置を、区分ごとに段階の順で並べると次のようになります。管理不全空家等(第13条)と特定空家等(第22条)は別の区分で、管理不全空家等への勧告のあとに特定空家等の手続きが続くとは、条文には書かれていません。また、条文に「できる」と書かれている措置は、市町村長が必要と認めた場合にとるもので、すべての空き家に順番どおり届くという意味ではありません。

段階対象条文に書かれていること条文
指導管理不全空家等特定空家等に該当することとなることを防止するために必要な措置をとるよう指導第13条第1項
勧告管理不全空家等指導をしてもなお状態が改善されず、特定空家等に該当することとなるおそれが大きいと認めるときに、修繕、立木竹の伐採その他の具体的な措置について勧告第13条第2項
助言・指導特定空家等除却、修繕、立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう助言または指導第22条第1項
勧告特定空家等助言・指導をしてもなお状態が改善されないときに、相当の猶予期限を付けて措置を勧告第22条第2項
命令特定空家等勧告を受けた者が正当な理由がなく措置をとらず、特に必要があると認めるときに、相当の猶予期限を付けて措置を命令第22条第3項
代執行特定空家等命令された措置を履行しないときなどに、行政代執行法の定めるところに従い、市町村長が自ら行う、または第三者に行わせる第22条第9項

第22条第1項では、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態または著しく衛生上有害となるおそれのある状態にない特定空家等については、助言・指導と、次の第2項の勧告の内容から、建築物の除却が除かれています。

命令の前には「通知書」が届き、意見を言う機会がある

この流れのなかで、所有者等の側に手続きの機会が書かれているのが、命令の前の段階です。

  • 市町村長は、命令をしようとする場合、あらかじめ、命じようとする措置とその事由、意見書の提出先と提出期限を書いた通知書を交付し、意見書と自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない(第22条第4項)。
  • 通知書の交付を受けた者は、交付を受けた日から5日以内に、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求できる(第22条第5項)。
  • 意見の聴取では、証人を出席させ、自己に有利な証拠を提出することができる(第22条第8項)。

意見書に何を書くか、どう対応するかは個別の判断になりますので、弁護士などの専門家や市町村の担当窓口にご相談ください。

命令をした場合、市町村長は、標識の設置などの方法でその旨を公示しなければならないとされ、標識は命令に係る特定空家等に設置することができます(第22条第13項・第14項)。命令に違反した者は50万円以下の過料に処するとされています(第30条第1項)。

所有者が分からないとき、緊急のときの規定もある

第22条には、上の順番によらない措置も書かれています。

  • 過失がなくて命令の対象となる者を確知することができないときは、市町村長は、その者の負担において、措置を自ら行うなどができる。この場合は、あらかじめ公告しなければならない(第22条第10項)。
  • 災害その他非常の場合で、特定空家等が保安上著しく危険な状態にある等、緊急に措置をとる必要があり、命令の手続きをとるいとまがないときは、命令の手続きによらずに、命令対象者の負担において措置を自ら行うなどができる(第22条第11項)。

どちらも、費用は命令対象者の負担とされています。

立入調査は、原則5日前までに通知

第9条第2項では、市町村長は、第22条第1項から第3項までの規定の施行に必要な限度で、所有者等に報告をさせたり、職員などに空家等と認められる場所へ立ち入って調査をさせたりすることができるとされています。立ち入らせようとするときは、その5日前までに所有者等に通知しなければなりません(通知することが困難なときを除く。第9条第3項)。報告をしない、虚偽の報告をする、立入調査を拒むなどした者は、20万円以下の過料に処するとされています(第30条第2項)。

福岡市の空き家バンクは「特定空家等でないこと」が登録の要件

福岡市の福岡市空き家バンクのページ(更新日2026年10月23日・2026年11月2日確認)は、登録できる空き家の要件として、次のことを挙げています(抜粋)。

  • 居住の用に供する一戸建ての建築物または店舗兼用住宅(店舗等の用に供する部分の床面積が延床面積の概ね1/2未満のもの)のうち、居住していないことが常態であるものまたは居住しなくなる予定のものであって、市内に所在すること
  • 空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第2項に規定する特定空家等でないこと
  • 建築基準法に基づく是正指導を受けていないこと

ほかにも、媒介契約の状況や、登記・権利関係などの要件がページに書かれています。要件の全体は市のページでご確認ください。

管理不全空家等は、この要件の文言には出てきません。

売りやすい側・売りにくい側として読める点

売りやすい側として読める点:前の章の2つ目の要件を、特定空家等に当たる前であれば満たしている点です。

売りにくい側として読める点:同じ要件を、特定空家等に当たると満たさなくなる点です。

どちらも、条文と市のページから読めることで、個々の家が売れるかどうかを示すものではありません。

先送りされやすい事情と、名義の話

実家の話が先送りされやすい事情そのものは、春日市・大野城市・太宰府市の実家、売る?残す?の「それでも先送りされてしまう3つの理由」の章で扱っています。

なお、第22条第4項は、意見書と自己に有利な証拠を提出する機会を「その措置を命じようとする者又はその代理人」に与えると書いています。名義の話は相続登記の義務化とは?で扱っています。

相場を自分で調べる3ステップ

  1. 国土交通省の不動産情報ライブラリで、不動産価格(取引価格・成約価格)情報を開き、実家のある地域の取引の例を見る。
  2. 不動産のポータルサイトで、同じ地域で売りに出ている、近い広さの一戸建てや土地を見る。
  3. 同じ不動産情報ライブラリの地価公示・都道府県地価調査で、実家に近い地点の価格を見る。

福岡市の相談窓口と空き家バンク

相談したいとき:福岡市住宅相談コーナー(福岡市役所3階・住宅計画課内、電話092-711-4808、更新日2026年7月10日)。予約不要・無料の一般相談のほか、無料・要予約の特別相談のなかに「空き家相談」(毎月第2木曜日)と「法律相談」(毎週金曜日)があります。

売りたい・貸したいとき:福岡市空き家バンク。仕組みと登録の流れは福岡市の空き家バンクの使い方で説明しています。

福岡市以外の市町村に実家がある場合は、その市町村の空き家の担当窓口にご確認ください。内容は2026年11月2日に各ページで確認したものです。最新の情報は、各窓口でご確認ください。

まず何から手をつけるか、3つだけ

  1. 市町村から書類が届いたときの連絡先を、家族で共有しておく。
  2. 実家の名義が誰になっているかを確かめる。
  3. 相場を上の3ステップで一度調べてから、窓口に相談する。

まとめ:手続きの順番を先に知っておく

空家法は、市町村が空き家についてとれる措置を、区分ごとに段階を追って定めていて、命令の前には意見を言う機会が置かれています。福岡市では、空き家バンクの要件にも特定空家等が出てきます。

私たちは不動産会社ですが、売ることを前提にお話はしていません。いまは売らないほうがいい実家もあります。まずは、実家がいまどの状態にあるかを確かめるところから始めてください。

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