「筑紫野市は人が増えているのだから、実家が空き家になっても何とかなるのでは」――そう考えている方もいるかもしれません。反対に、那珂川市に実家がある方のなかには「人が減っているなら、もう手の打ちようがないのでは」と感じている方もいるかもしれません。
国の統計で2つの市を並べると、5年間の人口は筑紫野市が増え、那珂川市が減っていて、向きが逆です。ところが、空き家を種類ごとに分けた統計で見ると、賃貸用・売却用・二次的住宅のどれにも当たらない空き家(統計上の「その他空き家」)が空き家のなかで占める割合は、人口が増えている筑紫野市のほうが高いという結果でした。このページでは、人口の数字と空き家の数字を分けて見たうえで、2つの市の窓口と空き家バンクの違いを整理します。
なお、春日市・大野城市・太宰府市を中心にした5市全体の動きは、春日市・大野城市・太宰府市の実家、売る?残す?ベッドタウン特有の事情で扱いました。このページは、そこでは数字に触れるだけだった筑紫野市と那珂川市の2市に絞っています。
5年間の人口は、筑紫野市が増え、那珂川市が減った
以下の数字は、総務省統計局「令和7年国勢調査」人口等基本集計の表1-1-3(政府統計の総合窓口、2026年10月22日確認)から取りました。2020年(令和2年)から2025年(令和7年)までの5年間の増減です。
| 地域 | 人口の増減 | 人口の増減率 | 世帯の増減 | 世帯の増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 筑紫野市 | 2,533人増 | +2.45% | 3,078世帯増 | +7.35% |
| 那珂川市 | 2,346人減 | △4.68% | 359世帯増 | +1.88% |
| 福岡県 | 57,429人減 | △1.12% | 88,852世帯増 | +3.82% |
人口の増減は、2つの市でほぼ同じくらいの人数で、向きが逆になっています。同じ表で福岡県内の60市町村を並べると、筑紫野市の人口の増加数は福岡市に次いで2番目、世帯の増加率は筑前町・大刀洗町・糸島市に次いで4番目でした(順位は当サイトで数えたものです)。
那珂川市は、人口が減った一方で世帯の数は増えています。ただ、その増加率は福岡県全体を下回っています。春日市・大野城市・太宰府市を加えた5市で比べると、人口の減少率がいちばん大きく、世帯の増加率がいちばん小さいのが那珂川市でした。
この表から当サイトで1世帯当たりの人数を計算すると、2025年は筑紫野市が約2.36人、那珂川市が約2.46人で、どちらも福岡県全体(約2.11人)より多くなります。2020年は筑紫野市が約2.47人、那珂川市が約2.63人でした。
空き家の中身では、筑紫野市のほうが「その他空き家」の割合が高い
人口の数字とは別に、空き家の数字も見てみます。総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」は、人が住んでいない住宅のうち空き家を、「賃貸用の空き家」「売却用の空き家」「二次的住宅(別荘など)」「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の4つに分けて数えています。4つ目は、総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査 用語の解説で次のように説明されています(2026年10月22日確認)。
賃貸用の空き家、売却用の空き家及び二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(注:空き家の種類の判断が困難な住宅を含む。)
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 用語の解説」
親が住まなくなり、貸しにも売りにも出していない実家は、この説明に近い状態です(実際にどの種類に数えられるかは、調査での判断によります)。名前が長いので、このページでは以下「その他空き家」と呼びます。
次の表は、同じ調査の住宅及び世帯に関する基本集計表1-2-1(居住世帯の有無別住宅数、2026年10月22日確認)から取りました。調査の時点は2023年10月です。割合は当サイトで計算し、小数第2位を四捨五入しています。
| 地域 | 住宅 | 空き家 | 空き家率 | その他空き家 | 空き家に占める割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 筑紫野市 | 46,770戸 | 3,670戸 | 7.8% | 1,600戸 | 43.6% |
| 那珂川市 | 21,360戸 | 1,940戸 | 9.1% | 650戸 | 33.5% |
| 福岡県 | 2,703,300戸 | 335,300戸 | 12.4% | 125,500戸 | 37.4% |
| 全国 | 65,046,700戸 | 9,001,600戸 | 13.8% | 3,856,000戸 | 42.8% |
空き家率は、2つの市とも福岡県全体と全国を下回っています。ところが、空き家のうちその他空き家が占める割合では、人口が増えている筑紫野市のほうが那珂川市より高く、福岡県全体も全国も上回っています。那珂川市は福岡県全体を下回っています。
同じ表から、空き家のうち賃貸用の空き家の割合を当サイトで計算すると、筑紫野市が約49.3%、那珂川市が約60.3%でした。那珂川市の空き家は、半分を超えて賃貸用です。
なお、この調査は標本調査で、統計表の数値には標本誤差が含まれます。また、市区町村(21大都市を除く)の数値は1の位を四捨五入して10の位までで表されています(総務省統計局「統計表利用上の注意」、2026年10月22日確認)。国勢調査(2025年)と住宅・土地統計調査(2023年)は、調査の年も調べているものも違います。このページでは2つを並べていますが、一方が他方の原因だという意味ではありません。
那珂川市のその他空き家は、一戸建が87.7%
空き家の種類を建物の建て方と組み合わせた表もあります(同じ調査の住宅及び世帯に関する基本集計表34-2、2026年10月22日確認)。そこから、その他空き家の数と、そのうち一戸建の数を抜き出しました。割合は当サイトで計算しています。
| 地域 | その他空き家 | 住宅に占める割合 | うち一戸建 | 一戸建の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 筑紫野市 | 1,600戸 | 3.4% | 1,190戸 | 74.4% |
| 那珂川市 | 650戸 | 3.0% | 570戸 | 87.7% |
| 福岡県 | 125,500戸 | 4.6% | 92,500戸 | 73.7% |
住宅全体に占めるその他空き家の割合は、2つの市とも福岡県全体を下回ります。一方で、その他空き家のうち一戸建が占める割合は、那珂川市が福岡県全体を上回っています。
私たちは、ここから「人口が増えている市なら空き家の心配は小さい」「人口が減っている市なら空き家の中身も重い」とは一律に言えない、と見ています。人口の数字と空き家の数字は、同じ方向を向いていませんでした。なぜそうなっているかは、これらの表からは分かりません。
那珂川市が案内する空き家バンク「SUMITSUKE 那珂川」は、南畑地区の6つの地域が対象
2つの市は、空き家バンクの組み立ても違います。
那珂川市の南畑地区で家や土地の売却・賃貸をお考えの方、空き家バンクがサポートします(更新日2025年4月1日・2026年10月22日確認)は、市の中山間地域である南畑地区の「南畑地区移住促進事業」として、地域で売却・賃貸を検討されている家や土地を、空き家バンク「SUMITSUKE 那珂川」に登録する仕組みです。対象エリアは市ノ瀬・埋金・不入道・成竹・寺倉・南面里の6つの地域と書かれています。同じページには、相談窓口に累計600組以上の移住相談が寄せられている一方、「現在はご案内できる物件が不足している状況」とも書かれています。
つまり、那珂川市に実家があっても、この6つの地域の外にあれば、このページの空き家バンクの対象エリアには入りません。相談窓口については、別のページで、那珂川市は2026年6月29日に公益社団法人福岡県宅地建物取引業協会と「空家等対策の推進に関する連携協定」を結び、市民の相談窓口を拡充したと案内しています(宅建協会と空家等対策の連携協定を締結しました、更新日2026年8月21日・2026年10月22日確認)。同じページで市は、本市の空き家率は全国平均を下回っていると書いていて、上の表の数字とも合っています。
筑紫野市の空き家バンクについて(更新日2023年10月17日・2026年10月22日確認)は、対象を市内にある空家(併用住宅(店舗兼用住宅)を含む)で、ほかの宅地建物取引業者と媒介契約を結んでいないものとしています(ほかの条件も市のページに書かれています)。貸したい・売りたい所有者が、市と連携する福岡県宅地建物取引業協会の空家総合相談窓口を通じて媒介契約を結び、物件は協会の不動産情報サイト「空き家DE暮らす」に登録・公開される仕組みです。相談窓口での相談は無料で、市は賃貸・売買の交渉や契約には関与しないこと、成約時には法定の範囲内の手数料等がかかることも書かれています。
売りやすい側・売りにくい側として読める点
売りやすい側として読める点:最初の表の、筑紫野市の人口と世帯の列、那珂川市の世帯の列です。2つ目の表の空き家率の列も、こちら側に挙げておきます。
売りにくい側として読める点:2つ目の表の、筑紫野市の「空き家に占める割合」の列と、3つ目の表の、那珂川市の「一戸建の割合」の列です。
どちらの点も、統計や市のページから読めることで、個々の家が売れるかどうかを示すものではありません。
実家の話を先に延ばしているあいだに、かかわってくること
最初に引用した用語の解説では、入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅も、その他空き家の例に挙がっていました。家族が「まだ空き家ではない」と考えている時期でも、統計の上では空き家の側に数えられうる、ということです。
もうひとつは名義と家族の合意です。筑紫野市の空き家バンクのページは、相続登記が完了していない、または共有者の意思確認ができないなどの理由で賃貸や売買が困難なもの、もしくは老朽化等により入居の目的が達せられないと判断されるものなどについて、登録を断ることがあると書いています。名義の話は相続登記の義務化とは?で扱っています。
相場を自分で調べる3ステップ
- 国土交通省の不動産情報ライブラリで、不動産価格(取引価格・成約価格)情報を開き、実家のある市の取引の例を見る。
- 不動産のポータルサイトで、同じ市で売りに出ている、近い広さの一戸建てや土地を見る。
- 同じ不動産情報ライブラリの地価公示・都道府県地価調査で、実家に近い地点の価格を見る。
筑紫野市・那珂川市の窓口と空き家バンク
筑紫野市:筑紫野市の空家等対策について(建設部建築課、電話092-923-1111(代表))。市は福岡県宅地建物取引業協会と協定を結んでいて、協会内に総合相談窓口が置かれていると案内しています。空き家バンクは上で紹介した空き家バンクについてのページです。
那珂川市:空き家に関する市のページは空き家に関するQ&Aで、問い合わせ先は市民生活部安全安心課 消防・防犯担当(電話092-953-2211)です。南畑地区の6つの地域にある家は、南畑地区の空き家バンクのページに移住交流促進センター「SUMITSUKE」の問い合わせ先が載っています。
内容は2026年10月22日に各ページで確認したものです。最新の情報は、各窓口でご確認ください。
まず何から手をつけるか、3つだけ
- 那珂川市に実家がある場合は、住所が「SUMITSUKE 那珂川」の対象エリアに入るかを確かめる。
- 実家の名義と、家族のなかで誰がどう考えているかを書き出す。前の章で見た、空き家バンクの登録の条件にかかわります。
- 相場を上の3ステップで一度調べてから、窓口に相談する。
まとめ:人口の増減と、空き家の中身は別に見る
筑紫野市と那珂川市は、5年間の人口の向きが逆でした。それでも、空き家を種類で分けた数字の並びは、人口の向きとは一致していませんでした。空き家バンクも、2つの市で対象と組み立てが違います。
私たちは不動産会社ですが、売ることを前提にお話はしていません。いまは売らないほうがいい実家もあります。まずは実家のある市の数字と、実家がいまどの状態にあるかを確かめるところから始めてください。
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