「空いとる実家、民泊にしたらよかやん。180日までならできるっちゃろ?」――家族でそんな話が出たことはありませんか。

民泊の「180日ルール」は、年間に人を泊められる日数の上限の話です。ただ、実家で民泊を考える場合は、日数の手前で確かめておきたい条件がいくつかあります。建物の登記、「住宅」に当たるかどうか、土地の区域、管理の形、そして売却を考えているときの税金の特例との関係です。このページでは、180日ルールの数え方を押さえたうえで、実家ならではの確認ポイントを福岡県の公式情報に沿って整理します。

民泊の制度全体(届出の流れや旅館業法との違い)は民泊を始めるのに必要な許可・届出は?住宅宿泊事業法をやさしく解説にまとめています。この記事では、そこから一歩進んで「実家の場合」に絞ります。

180日ルールとは:「1年」と「1日」の数え方

住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)の第2条第3項は、住宅宿泊事業を「宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業」で、人を宿泊させる日数が「一年間で百八十日を超えないもの」と定めています(法令検索の住宅宿泊事業法、2026年9月30日確認)。

日数の数え方は、観光庁の民泊制度ポータルサイトで次のように説明されています(2026年9月30日確認)。

項目数え方
1年間毎年4月1日正午から翌年4月1日正午まで
1日正午から翌日の正午まで
数える単位届出住宅ごと

泊めた日数などは、同法第14条にもとづいて、定期的に都道府県知事に報告することになっています。また同法第18条では、騒音などによる生活環境の悪化を防ぐために必要があるとき、都道府県(保健所設置市等の区域ではその市等)が条例で区域を定めて、民泊を実施する期間を制限できる仕組みになっています。つまり180日は「法律上の上限」で、地域によってはさらに短くなることがあり得る、という位置づけです。条例による制限の有無は、条例を定める都道府県や市に確認してください。

福岡県の住宅宿泊事業法の概要のページには、「福岡県では、県内全域の届出を県(生活衛生課)で受け付けています」と書かれています(2026年9月30日確認)。実家が福岡市でも北九州市でも、民泊新法の届出の窓口は県です。

実家の場合、180日より先に確かめたい4つの条件

ここからが、実家ならではの話です。福岡県の概要のページと届出方法等のページ(いずれも2026年9月30日確認)には、長く住んできた家や相続した家で引っかかりやすい条件が並んでいます。

1. 建物が登記されているか

県の届出方法等のページによると、届出には届出住宅の不動産番号が必要で、「建物登記がされていない建物では届出ができません」とされています。また、民泊ができる建物は「一戸建ての住宅」「長屋」「共同住宅」「寄宿舎」として登記されているものに限られます。

2. 空き家のままで「住宅」に当たるか

民泊ができるのは、法律上の「住宅」です。県の概要のページでは、台所・浴室・便所・洗面設備があることに加えて、居住の用に供されていると認められる家屋であることが求められています。そのうちの一つ「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」の具体例として、「相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住する予定の空き家」が挙げられています。あわせて、この類型は「少なくとも年1回以上は使用している家屋」である場合に該当すると説明されています。誰も使っていない状態が続いている実家は、この点を窓口で確かめる必要があります。

3. 市街化調整区域にある家ではないか

県の概要のページには、市街化調整区域の中の住宅について注意書きがあります。許可を受けた特定の人だけが住める住宅(属人性のある住宅)の場合、家主がそこに住まない「家主不在型」では届出ができない、と表で整理されています。区域の設定があるか、属人性のある建物に当たるかは、物件のある市町村に問い合わせるよう書かれています。

4. 誰が管理するか

実家に誰も住んでいない場合、民泊は家主が不在の形になります。住宅宿泊事業法第11条では、人を宿泊させる間に家主が不在(一時的なものとして省令で定めるものを除く)となるときなどは、管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなければならないと定めています。自宅との距離などを考えて省令で定める場合の例外もあります。加えて、県の届出方法等のページでは、届出の際に消防署が交付する「消防法令適合通知書」と、周辺住民への事前周知の報告書が必要とされています。

売却を考えているなら、始める前に税金の特例を確認する

もう一つ、実家ならではの確認ポイントがあります。相続した空き家を売ったときに使える「3,000万円の特別控除」です(令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円まで)。

国税庁のタックスアンサー「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等、2026年9月30日確認)では、特例の要件の一つとして「相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用または居住の用に供されていたことがないこと」が挙げられています。

民泊は宿泊料を受けて人を泊める事業です。「しばらく民泊で使って、そのあと売る」という順番を考えているなら、この要件との関係を、民泊を始める前に税理士か税務署に確認してください。特例が使えるかどうかは個別の事情で変わるため、この記事では判断しません。特例そのものの条件は空き家の3,000万円特別控除とは?で整理しています。

実家の民泊が「向く側」として読める点

  • 上の条件1〜3に当てはまることを、書類と窓口で確かめられた実家
  • 条件4の管理を、委託を含めて決められる実家

実家の民泊が「向かない側」として読める点

  • 条件1〜3のどれかで、届出ができないと分かった実家
  • 売却を考えていて、税金の特例との関係をまだ確かめていない実家(前の章のとおり、始める前の確認が要ります)

180日では足りないとき:別の制度もあります

県の概要のページの比較表では、旅館業法の許可を受ける方法は営業日数の制限が「制限なし」とされ、申請先は管轄の保健所です。一方で、届出ではなく許可が必要です。旅館業法による民泊について福岡市が出している案内資料(令和2年5月改訂、2026年9月30日確認)では、相談先として区の保健福祉センターのほかに、建築(住宅都市局 建築審査課)と消防(区の消防署)の窓口も挙げられています。住宅として使ってきた実家をそのまま転用できるかは、こうした窓口で個別に確かめることになります。

北九州市には、もう一つ「特区民泊」という制度があります。北九州市の「民泊」をお考えの方へ(2026年9月30日確認)では、民泊の方法として旅館業法(簡易宿所営業)、国家戦略特区法の特区民泊、住宅宿泊事業法の3つが並べられています。特区民泊は北九州市が認定を行い、宿泊は2泊3日以上とされています。

「とりあえず民泊に」のまま置いておかないために

条件1〜3は、届出の前に調べられるものです。当社は、民泊を案のまま置いておくより、条件を確かめてから家族で決めるほうがよいと考えています。

自分で確かめる3つのステップ

  1. 建物が登記されているかを確かめる。条件1を確かめるためです。
  2. 物件のある市町村に問い合わせる。条件3を確かめるためです。
  3. 届出の窓口である県の生活衛生課に、事前に相談する。県のページでは、担当者が不在の場合があるため、事前に連絡して予約するよう案内されています。

窓口と入口

制度や窓口の情報は変わることがあります。届出の前には、各窓口で最新の内容をご確認ください。

まず何から手をつけるか、3つだけ

  1. 家族で「売る予定があるか」を先に話し合う。売る可能性があるなら、税金の特例との関係を専門家に聞くのが先です。
  2. 実家の登記と区域を、上の3ステップの1と2で確かめる。
  3. 家主不在になるなら、管理を誰に委託するかを決める。遠くに住んでいる場合の管理の考え方は遠方に住みながら実家を管理する方法にまとめています。

まとめ:180日は上限、実家はその手前に条件がある

民泊の180日ルールは、年間に泊められる日数の上限です。実家で民泊をする場合は、その手前に「登記」「住宅に当たるか」「区域」「管理」の条件があり、売却を考えているなら税金の特例との関係も確かめることになります。当社は不動産会社として、売らないほうがいい実家もあると考えています。民泊が合うかどうかも、条件を確かめてから決めても遅くありません。

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ご実家をどうするか迷っているなら、1分でできる実家診断から始めてみてください。質問に答えるだけで、いまの状況に合う選択肢が分かります。

よくある質問

Q. 180日はどう数えますか?

A. 本文の「180日ルールとは」の章の表をご覧ください。

Q. 誰も住んでいない実家でも民泊はできますか?

A. 法律上の「住宅」に当たるかどうかで変わります。本文の「2. 空き家のままで『住宅』に当たるか」をご覧のうえ、県の窓口でご確認ください。

Q. 民泊をすると、売るときの税金に影響しますか?

A. 関係する要件があります。本文の「売却を考えているなら」の章をご覧ください。個別の判断は税理士か税務署にご確認ください。

Q. 登記や税金の手続きも相談できますか?

A. 登記は司法書士、税金の申告は税理士の業務です。当社からご案内することはできませんので、専門家におつなぎする形になります。相続登記の義務化とは?もあわせてご覧ください。