「福岡市は人が増えているのだから、うちの実家が空き家になる心配はないのでは」――そう考えている方もいるかもしれません。

総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」には、福岡市の7つの区ごとに、住宅の数と空き家の数が載っています。空き家の数を住宅の数で割った「空き家率」は、7区とも福岡県全体や全国より低い数字です。なかでも西区は、7区のうちいちばん低い区です。ところが、その西区の空き家を種類ごとに分けると、空き家のうち4割強が、賃貸用・売却用・二次的住宅のどれでもない「その他空き家」でした。

このページでは、福岡市の空き家を「種類」で分けて区ごとに見ていきます。区ごとの人口の動きは、福岡市の実家、どうする?全7区で人口は増えたのに、増えた分の約8割は3つの区だったで扱いました。

空き家は4つの種類に分けて数えられています

住宅・土地統計調査では、人が住んでいない住宅のうち「空き家」を、「賃貸用の空き家」「売却用の空き家」「二次的住宅(別荘など)」「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の4つに分けて数えています。4つ目は、総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査 用語の解説で次のように説明されています(2026年10月14日確認)。

賃貸用の空き家、売却用の空き家及び二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(注:空き家の種類の判断が困難な住宅を含む。)

総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 用語の解説」

親が住まなくなり、貸しにも売りにも出していない実家は、この説明に近い状態です(実際にどの種類に数えられるかは、調査での判断によります)。名前が長いので、このページでは以下「その他空き家」と呼びます。

空き家率がいちばん低い西区で、その他空き家の割合がいちばん高い

以下の数字は、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」住宅及び世帯に関する基本集計の表1-2-1(居住世帯の有無別住宅数)から取りました(政府統計の総合窓口、2026年10月14日確認)。調査の時点は2023年10月です。割合は当サイトで計算し、小数第2位を四捨五入しています。7区の行は、いちばん右の列が大きい順に並べました。市・県・全国の行は比べるために載せています。

区住宅の数空き家空き家率その他空き家空き家に占めるその他空き家の割合
西区106,230戸5,780戸5.4%2,460戸42.6%
東区182,170戸18,370戸10.1%5,380戸29.3%
南区145,370戸12,190戸8.4%2,760戸22.6%
中央区147,580戸13,040戸8.8%1,370戸10.5%
早良区112,090戸7,770戸6.9%610戸7.9%
博多区174,750戸15,330戸8.8%520戸3.4%
城南区75,820戸7,220戸9.5%230戸3.2%
福岡市944,000戸79,700戸8.4%13,300戸16.7%
福岡県2,703,300戸335,300戸12.4%125,500戸37.4%
全国65,046,700戸9,001,600戸13.8%3,856,000戸42.8%

空き家率は、西区が5.4%で7区のうちいちばん低く、東区が10.1%でいちばん高くなっています。7区とも、福岡県全体(12.4%)と全国(13.8%)を下回っています。

ところが、空き家のうちその他空き家が占める割合で並べると、順番が入れ替わります。西区は42.6%で7区のいちばん上になり、7区のなかで福岡県全体(37.4%)を上回っているのは西区だけです。一方、博多区は空き家15,330戸のうち14,350戸が賃貸用の空き家で(同じ表1-2-1)、その他空き家の割合は3.4%です。

その他空き家の戸数で見ると、東区・南区・西区の3区を足して10,600戸になり、7区のその他空き家を足した数(13,330戸)の79.5%にあたります。同じ3区の住宅を足すと433,770戸で、7区の住宅を足した数(944,010戸)の45.9%です。

なお、この調査は標本調査で、統計表の数値には標本誤差が含まれます。また、統計表の数値は表章単位未満の位で四捨五入されているため、区の数字を足しても市の数字と一致しないことがあります(総務省統計局「統計表利用上の注意」、2026年10月14日確認)。

その他空き家のうち、一戸建はどれくらいか

空き家の種類を建物の建て方と組み合わせた表もあります(総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」住宅及び世帯に関する基本集計の表34-2、2026年10月14日確認)。そこから、その他空き家の数と、そのうち一戸建の数を抜き出しました。割合は当サイトで計算し、7区の行は割合が大きい順に並べています。

区その他空き家うち一戸建一戸建の割合
城南区230戸140戸60.9%
西区2,460戸1,350戸54.9%
南区2,760戸1,420戸51.4%
早良区610戸250戸41.0%
博多区520戸200戸38.5%
東区5,380戸1,720戸32.0%
中央区1,370戸70戸5.1%
福岡市13,300戸5,100戸38.3%
福岡県125,500戸92,500戸73.7%

7区とも、一戸建の割合は福岡県全体(73.7%)を下回っています。城南区は割合では7区でいちばん高いものの、戸数は230戸のうち140戸です。戸数が千戸を超える区のなかでは、西区と南区で、その他空き家の半分を超える数が一戸建でした。

数字から読める点を、正直に

「売りやすい側」として読める点

住宅に占めるその他空き家の割合を当サイトで計算すると、いちばん高い東区でも3.0%で、7区とも福岡県全体(4.6%)と全国(5.9%)を下回ります。賃貸用・売却用・二次的住宅のどれでもない空き家が、住宅全体のなかでは少ない市だ、と私たちは読んでいます。

「売りにくい側」として読める点

西区は空き家率が低い一方で、空き家のなかではその他空き家の割合が7区でいちばん高い区でした。空き家率の低さだけでは、その区の空き家の中身までは分からない、と私たちは見ています。

また、2つ目の表で一戸建の割合が半分を超えていた西区と南区は、その他空き家のなかに一戸建が多い区として、こちら側の点に挙げておきます。

どちらの点も、統計の数字の並びから読めることで、個々の家が売れるかどうかを示すものではありません。原因についても、この表からは言えません。

実家の話が先に延びやすい理由

最初に引用した用語の解説では、入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅も、その他空き家の例に挙がっていました。家族が「まだ空き家ではない」と考えている時期でも、統計の上では空き家の側に数えられうる、ということです。私たちは、この時期こそ、売るか、貸すか、残すかを決めないまま時間が過ぎやすいと見ています。

私たちは、もうひとつの理由は名義と家族の合意だと見ています。福岡市の福岡市空き家バンクのページ(更新日2026年9月16日・2026年10月14日確認)は、物件を登録できる要件として「登記が完了し、権利関係が整理されていること」「共有の場合、共有者全員の合意が得られていること」を挙げています。登記が済んでいなかったり、共有で全員の合意がそろっていなかったりすると、この要件を満たさない場合があります。名義の話は相続登記の義務化とは?で扱っています。

相場を自分で調べる3ステップ

  1. 国土交通省の不動産情報ライブラリで、不動産価格(取引価格・成約価格)情報を開き、実家のある区の取引の例を見る。
  2. 不動産のポータルサイトで、同じ区で売りに出ている、近い広さの一戸建てや土地を見る。
  3. 同じ不動産情報ライブラリの地価公示・都道府県地価調査で、実家に近い地点の価格を見る。

福岡市の窓口と空き家バンク

相談したいとき:福岡市住宅相談コーナー(福岡市役所3階・住宅計画課内、電話092-711-4808)。予約不要・無料の一般相談のほか、無料・要予約の特別相談のなかに「空き家相談」(毎月第2木曜日)があります。

売りたい・貸したいとき:福岡市空き家バンク(問い合わせ先は住宅都市みどり局 住宅部 住宅計画課、電話092-711-4598)。ページには、空き家の要件として、居住の用に供する一戸建ての建築物または店舗兼用住宅であることなどが書かれています。仕組みと登録の流れは福岡市の空き家バンクの使い方で説明しています。

相談日や受付方法、登録の要件は変わることがあります。内容は2026年10月14日に各ページで確認したものです。最新の情報は、各窓口でご確認ください。

まず何から手をつけるか、3つだけ

  1. 上の2つの表で、実家がある区の行を見る。空き家率の列と、その他空き家の列の両方を見ます。
  2. 実家の名義と、家族のなかで誰がどう考えているかを書き出す。空き家バンクの要件にある「登記」と「共有者全員の合意」が、ここにかかわります。
  3. 相場を上の3ステップで一度調べてから、窓口に相談する。

まとめ:「空き家率が低い区」でも、中身は別に見る

福岡市の7区は、空き家率ではどの区も福岡県全体と全国を下回っていました。それでも、空き家の中身を種類で分けると、区ごとの違いが出てきます。西区のように、空き家率がいちばん低い区で、その他空き家の割合がいちばん高いこともあります。

私たちは不動産会社ですが、売ることを前提にお話はしていません。いまは売らないほうがいい実家もあります。まずは実家のある区の数字と、実家がいまどの状態にあるかを確かめるところから始めてください。

あわせて読みたい

ご実家をどうするか迷っているなら、1分でできる実家診断から始めてみてください。質問に答えるだけで、いまの状況を整理できます。