「福岡市は人が増えているし、実家もそのうちどうにかなるでしょう」。福岡市に実家がある方なら、家族のあいだでこんな言葉が出たことがあるかもしれません。

たしかに、令和7年国勢調査の確報で、福岡市の人口は5年前より増えました。しかも7つの区のすべてで増えています。ただ、区ごとの数字を並べてみると、「増えている」の中身はかなり偏っていました。この記事では、福岡市が公表した確報の結果概要をもとに、実家のある「区」の数字から考える方法をまとめます。

福岡市は、7つの区すべてで人口が増えました

福岡市の「令和7年国勢調査 人口等基本集計結果概要」によると、令和7年10月1日現在の福岡市の人口は1,662,793人で、令和2年から50,401人(3.1%)増えました。世帯数は888,299世帯で、57,175世帯(6.9%)の増加です。市の資料は、区別にみると「全ての区で増加した」とまとめています。

福岡県全体では、人口は5,077,785人で前回から57,429人(1.1%)減り、県の要約では昭和45年の国勢調査以降で初めて減少に転じたとされています。市町村別の人口増加数がいちばん大きいのが福岡市です。県全体が減るなかで、福岡市は5年前より増えた、というのが大きな構図です。

区人口(令和7年)5年間の増減増減率1世帯当たり人員65歳以上の割合
東区339,502人+16,999人+5.3%1.99人22.3%
博多区264,121人+12,087人+4.8%1.55人17.7%
中央区216,199人+10,698人+5.2%1.58人18.9%
南区270,552人+4,969人+1.9%2.00人23.6%
城南区133,980人+1,116人+0.8%1.93人25.2%
早良区225,002人+3,674人+1.7%2.13人25.3%
西区213,437人+858人+0.4%2.11人24.8%
福岡市全体1,662,793人+50,401人+3.1%1.87人22.3%
出典:福岡市「令和7年国勢調査 人口等基本集計結果概要」表1・表2(令和7年10月1日現在、2026年10月12日確認)

増えた5万人のうち、約8割は東区・博多区・中央区の3区でした

表の「5年間の増減」を足してみます。東区・博多区・中央区の3区を合わせると39,784人で、市全体の増加50,401人の約8割(78.9%)にあたります(割合は当サイトで計算)。残りの南区・城南区・早良区・西区の4区を合わせた増加は10,617人です。

増加率で見ると差はもっとはっきりします。市全体は3.1%ですが、この4区はいずれも市全体を下回り、西区は0.4%(858人)、城南区は0.8%(1,116人)でした。「福岡市は増えている」は市全体としては正しい一方で、区によっては5年間ほぼ横ばいに近い数字です。

同じ資料には、65歳以上の人がいる世帯の割合も区別に載っています。

区65歳以上の世帯員のいる一般世帯の割合高齢夫婦世帯の割合高齢単身世帯の割合
東区29.5%8.4%11.9%
博多区19.4%4.1%10.1%
中央区22.0%5.4%11.0%
南区31.8%8.9%13.1%
城南区33.1%9.1%14.1%
早良区36.0%10.4%14.2%
西区33.0%9.9%12.1%
福岡市全体28.2%7.7%12.1%
出典:福岡市「令和7年国勢調査 人口等基本集計結果概要」表4(一般世帯に占める割合。2026年10月12日確認)

人口の伸びが市全体を下回った4区は、65歳以上の世帯員のいる世帯の割合がいずれも3割を超えています。いちばん高い早良区は36.0%で、いちばん低い博多区(19.4%)とは16.6ポイントの差があります。

この2つの数字のどちらかが、もう一方の原因だということではありません。ただ、私たちはこう見ています。65歳以上の人がいる世帯の割合が高い区ほど、市全体の「増えている」という数字とは別に、その区の数字で実家のことを考えたほうがよい、と。市の平均は、東区・博多区・中央区の大きな増加に引っぱられた数字だからです。

福岡市の実家の「売りやすさ」を考える前に、正直に見ておきたい3つの数字

1. 市全体では、人口も世帯も増えている

追い風に見えるのはこの点です。冒頭で見たとおり、市全体として見れば、住む人も世帯も増えている都市です。

2. ただし、区によって増え方が大きく違う

一方で、先ほどの表のとおり、増加率は東区の5.3%から西区の0.4%まで、同じ福岡市の中で10倍以上の開きがあります。市全体の数字は、実家のある区の数字とは別のものです。私たちは、家族で実家の話をするときには、市全体ではなく区の数字から始めるのがよいと考えています。

3. 一戸建ては、市内の住まいの約2割

同じ資料の住宅の集計では、福岡市の住宅に住む一般世帯のうち、共同住宅に住む世帯が79.6%、一戸建てに住む世帯は175,116世帯で19.9%でした。一戸建てに住む世帯の93.0%は持ち家です。市内の住まいの多くが共同住宅なので、私たちは、一戸建ての実家の相場は一戸建てや土地の取引で確かめるのがよいと考えています。

親が住んでいるうちは、実家は空き家ではありません

福岡市の高齢単身世帯は106,983世帯で、前回から16.3%増えました。区別の割合は、先ほどの表のとおり早良区と城南区で高めです。

親が一人でも実家に住んでいるうちは、その家は空き家ではありません。「空き家になったら考えよう」と決めていると、話し合いを始めるきっかけがないまま時間が過ぎることがあります。住む人がいなくなってから、名義、書類の置き場所、家財の扱いをまとめて決めることになる場合もあります。

親が元気なうちにできることは、親が元気なうちにできる実家対策5つにまとめています。

相場は、実家のある区の取引から自分で調べられます

  1. 不動産情報ライブラリで取引価格を見る:不動産情報ライブラリは、不動産の取引価格や地価公示などの価格情報を見ることができる国土交通省のサイトです。実家と同じ区の、一戸建てや土地の取引を中心に見ます。
  2. 不動産ポータルで売り出し中の物件を見る:同じ区・近い広さの一戸建てや土地がいくらで売りに出ているかを確認します。
  3. 地価公示・地価調査の価格を見る:同じく不動産情報ライブラリの地価公示・都道府県地価調査の検索で、地点ごとの価格を調べられます。実家の近くの地点の価格を、ひとつの目安として確認します。

福岡市の窓口と空き家バンク

相談日や受付方法、登録の要件は変わることがあります。内容は2026年10月12日に各ページで確認したものです。最新の情報は、各窓口でご確認ください。

まず何から手をつけるか、3つだけ

  1. 実家のある区の数字を家族で共有する:この記事の2つの表で、人口の増え方と、65歳以上の人がいる世帯の割合を確認します。
  2. 親が住んでいるうちに、名義と書類の置き場所を確かめる:登記の名義が誰になっているか、関係する書類がどこにあるかを、親に聞けるうちに聞いておきます。
  3. 区の相場を自分で一度調べてから相談する:上の3つの方法で目安をつかんでおくと、窓口や不動産会社に相談するときの話が具体的になります。

まとめ

令和7年国勢調査の確報で、福岡市は7つの区すべてで人口が増えました。ただし、増加の大半は東区・博多区・中央区の3区で、西区や城南区の増加率は1%に届いていません。そして、人口の伸びが市全体を下回った4区では、65歳以上の人がいる世帯が3割を超えています。

「福岡市だから大丈夫」と市全体の数字で考えるのではなく、実家のある区の数字から話を始めてみてください。売るか、貸すか、残すかを決めるのは、その後で十分です。

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