「このあたりは新しい家がどんどん建っているのに、うちの実家だけ古いままで」

糟屋郡に実家がある方から、よくうかがう言葉です。

宇美町・篠栗町・志免町・須恵町・新宮町・久山町・粕屋町。福岡市の東に隣り合うこの7町は、いま全国でもっとも人口の多い郡です。人が減っている地域ではなく、増えている地域にある実家。だからこそ、他の地域とは事情が違います。

糟屋郡の実家は「売れない心配」をしなくていい地域です

まず、いちばんお伝えしたいことから。

実家の相談で多いのは「こんな古い家、買い手なんてつかないのでは」という不安です。ですが糟屋郡に関しては、その心配はかなり小さいと考えていただいて構いません。

糟屋郡の人口は約23万人(2026年6月時点の推計)で、全国の郡のなかで最多です。粕屋町・新宮町・久山町は、直近の国勢調査で福岡県の人口増加率の上位5位以内に3町そろって入りました。高齢化率も県内では低いほうで、子育て世代の流入が続いています。

博多・天神へ出やすく、福岡空港も近い。それでいて福岡市内より住宅を持ちやすい。この条件が、買い手を途切れさせていません。

つまり糟屋郡の実家は、放っておいても価値が落ちにくい代わりに、放っておく理由もない地域にあります。

ところが、7町のほとんどに空き家バンクがありません

ここが糟屋郡の特徴です。

国土交通省がまとめている全国の空き家・空き地情報サイトのリンク集で糟屋郡を見ると、独自の空き家バンクを掲載しているのは宇美町と、新宮町(相島=離島向け)だけです。篠栗町・志免町・須恵町・久山町・粕屋町の名前はここに載っていません。

これは自治体の怠慢ではありません。空き家バンクは本来、放っておくと買い手がつかない地域で、行政が間に入って移住者とつなぐための仕組みです。人が増えていて、普通に売買が成立する糟屋郡では、行政が仲立ちする必要がそもそも薄いのです。

ですから糟屋郡の実家については、「まず空き家バンクに登録して待つ」という進め方は現実的ではありません。通常の売買・賃貸のルートに乗せたほうが、はるかに早く動きます。

念のため、確認先も挙げておきます。

それでも糟屋郡の実家が止まってしまう3つの理由

条件は恵まれている。それなのに動けない。理由はたいてい、不動産の外側にあります。

理由1:町ごとに窓口がバラバラで、どこに聞けばいいか分からない

糟屋郡は7つの町の集まりです。市であればひとつの窓口で済む話が、町ごとに担当課も制度も分かれています。「隣の町では相談会をやっていたが、うちの町にはない」ということが普通に起こります。

相談先を探す段階で力尽きてしまう——これは糟屋郡でとくに起こりやすい詰まり方です。

理由2:親がまだ元気で、話を切り出せない

いちばん多い理由です。「まるで親の最期を待っているようで言い出せない」とおっしゃる方は少なくありません。

ただ、認知症などで判断能力が低下すると、ご本人名義の不動産は原則として売却できなくなります。成年後見制度を使うことになり、手続きも時間も一気に重くなります。親御さんが元気なうちに一度話しておくことが、結果的にご家族全員を守ります。

理由3:資産価値があるぶん、きょうだいで折り合わない

糟屋郡ならではの詰まり方です。

値段がつかない実家なら「じゃあ誰かが引き取るか」で話が終わることもあります。ところが糟屋郡の実家は、それなりの資産になります。金額が見えるからこそ、分け方で意見が割れる。

私たちの経験では、こうした対立の正体はお金そのものより「思い出の家を手放す決断をした人」という役回りを誰も引き受けたくないことにあります。第三者を入れて選択肢を全部並べるだけで、話が動き出すことがあります。話がまとまったあとの書面については遺産分割協議書は自分で作れる?書き方と注意点もご覧ください。

相場を自分で調べる3つのステップ

「まず自分で相場感をつかみたい」という方へ。無料で、今日中にできます。

ステップ1:国土交通省「不動産情報ライブラリ」で実際の取引価格を見る

国が公表している実際の成約価格のデータベースです。不動産情報ライブラリで市区町村・地区・築年数を絞り込めます。売り出し価格ではなく「実際に売れた値段」なので、いちばん実態に近い数字が分かります。

ステップ2:ポータルサイトで「いま売りに出ている物件」を見る

SUUMO・HOME'Sなどで、実家と同じ町・同じ校区・近い築年数の物件を探します。ステップ1が「過去に売れた値段」、ステップ2が「今の売り出し価格」。この2つを見比べると、相場の幅が見えてきます。

ステップ3:固定資産税の納税通知書を確認する

毎年届く納税通知書に「固定資産税評価額」が載っています。土地の実勢価格は、この評価額のおおむね1.1〜1.2倍程度が目安とされることが多いですが、あくまで参考値です。

この3つで分かるのは「だいたいの幅」です。同じ校区・同じ築年数でも、間口・道路付け・境界の確定状況・再建築の可否で価格は数百万円単位で変わります。最終的には現地を見ないと分かりません。ただ、幅を知っているだけで、その先の話がずっとしやすくなります。

売る以外の選択肢も、糟屋郡なら現実的です

人が増えている地域なので、「売る」以外の道も検討する価値があります。

  • 貸す:子育て世代の賃貸需要があります。リフォーム費用を回収できるかが判断の分かれ目です
  • 建て替えて活用する:土地に需要がある地域なので、更地にしてからの選択肢が広いです
  • 当面は保有する:価値が落ちにくい地域なので、急いで手放さない判断もあり得ます。ただし管理と固定資産税の負担は続きます

どれを選ぶかは、ご家族の状況と実家の条件しだいです。大事なのは「売る/残す」の二択で争わないことです。

まず何から手をつけるか

順番に迷ったら、この3つからです。

この3つが済んでいれば、専門家に相談したときの話の進み方がまったく違います。

まとめ:糟屋郡の実家は、動けば選択肢が多い

糟屋郡の実家は、九州全体で見ればかなり恵まれた条件にあります。人口が増え、買い手も借り手もいる。問題は「まだどうにかなっている」時間が長く続いてしまうことと、町ごとに窓口が分かれていて最初の一歩が見えにくいことだけです。

実家ラボは、福岡・九州の実家について、相続の整理・空き家の活用・売却・民泊運営までをひとつの窓口でご相談いただける場所です。運営しているのは福岡市の不動産会社なので、相談から実行まで同じチームで対応できます。

そして私たちは不動産会社ですが、だからこそ「売らないほうがいい実家」があることも知っています。売却ありきのご提案はいたしません。

「まだ何も決まっていないけれど、話だけ聞いてみたい」——その段階のご相談が、いちばん多く、いちばん早く動き出せます。お問い合わせはこちらからどうぞ。

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