「実家は一戸建てじゃないから、空き家の話は関係ないと思っていた」――そう考えている方もいるかもしれません。
総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」で、春日市・大野城市・太宰府市の空き家を種類ごとに分けると、3市とも、空き家に占める「その他空き家」の割合は福岡県全体(37.4%)より低い数字でした。ところが、そのその他空き家を建物の建て方で分けると、一戸建以外(長屋建・共同住宅・その他)の割合は春日市47.6%、大野城市42.2%、太宰府市35.0%で、3市とも福岡県全体(26.3%)を上回っていました。
このページでは、3市の空き家を「種類」と「建て方」で分けて見ていきます。令和7年国勢調査で見た3市の人口・世帯の動きや、3市で形が違う相談窓口の全体像は、春日市・大野城市・太宰府市の実家、売る?残す?ベッドタウン特有の事情で扱いました。
空き家は4つの種類に分けて数えられています
住宅・土地統計調査では、人が住んでいない住宅のうち「空き家」を、「二次的住宅」「賃貸用の空き家」「売却用の空き家」「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の4つに分けて数えています。4つ目は、総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査 用語の解説で次のように説明されています(2026年11月5日確認)。
賃貸用の空き家、売却用の空き家及び二次的住宅以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などのため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのために取り壊すことになっている住宅など(注:空き家の種類の判断が困難な住宅を含む。)
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 用語の解説」
名前が長いので、このページでは以下「その他空き家」と呼びます。
3市の空き家は、半分以上が「賃貸用」
以下の数字は、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」住宅及び世帯に関する基本集計の第1-2表(居住世帯の有無別住宅数)から取りました(政府統計の総合窓口、2026年11月5日確認)。調査の時点は2023年10月です。割合は当サイトで計算し、小数第2位を四捨五入しています。
| 地域 | 住宅の数 | 空き家 | 空き家率 | その他空き家 | 空き家に占めるその他空き家の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 春日市 | 53,700戸 | 6,320戸 | 11.8% | 1,850戸 | 29.3% |
| 大野城市 | 47,070戸 | 2,910戸 | 6.2% | 900戸 | 30.9% |
| 太宰府市 | 34,360戸 | 2,790戸 | 8.1% | 1,030戸 | 36.9% |
| 福岡県 | 2,703,300戸 | 335,300戸 | 12.4% | 125,500戸 | 37.4% |
| 全国 | 65,046,700戸 | 9,001,600戸 | 13.8% | 3,856,000戸 | 42.8% |
同じ表で、その他空き家以外の3つの種類は次のとおりです。かっこ内は、空き家の総数に占める割合です。
| 地域 | 賃貸用の空き家 | 売却用の空き家 | 二次的住宅 |
|---|---|---|---|
| 春日市 | 4,130戸(65.3%) | 240戸(3.8%) | 100戸(1.6%) |
| 大野城市 | 1,670戸(57.4%) | 270戸(9.3%) | 70戸(2.4%) |
| 太宰府市 | 1,500戸(53.8%) | 250戸(9.0%) | 10戸(0.4%) |
| 福岡県 | 189,100戸(56.4%) | 16,500戸(4.9%) | 4,300戸(1.3%) |
| 全国 | 4,435,800戸(49.3%) | 326,200戸(3.6%) | 383,500戸(4.3%) |
3市とも、空き家のうち最も多い種類は賃貸用の空き家でした。春日市は空き家6,320戸のうち4,130戸が賃貸用です。売却用の空き家が空き家に占める割合は、大野城市(9.3%)と太宰府市(9.0%)で福岡県全体(4.9%)を上回っています。
なお、この調査は標本調査で、統計表の数値には標本誤差が含まれます。また、統計表の数値は表章単位未満の位で四捨五入されているため、総数と内訳の合計は必ずしも一致しません(総務省統計局「統計表利用上の注意」、2026年11月5日確認)。
その他空き家を建て方で分けると、一戸建以外が県より多い
空き家の種類を、建物の建て方や腐朽・破損の有無と組み合わせた表もあります(総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」住宅及び世帯に関する基本集計の第34-2表、2026年11月5日確認)。この表では、建て方が「一戸建」と「長屋建・共同住宅・その他」の2つに分かれています。そこから、その他空き家の数を建て方ごとに抜き出しました。割合は、その他空き家の総数を分母に当サイトで計算しています。
| 地域 | その他空き家 | うち一戸建 | 一戸建の割合 | うち長屋建・共同住宅・その他 | 長屋建・共同住宅・その他の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 春日市 | 1,850戸 | 970戸 | 52.4% | 880戸 | 47.6% |
| 大野城市 | 900戸 | 530戸 | 58.9% | 380戸 | 42.2% |
| 太宰府市 | 1,030戸 | 660戸 | 64.1% | 360戸 | 35.0% |
| 福岡県 | 125,500戸 | 92,500戸 | 73.7% | 33,000戸 | 26.3% |
| 全国 | 3,856,000戸 | 2,851,100戸 | 73.9% | 1,004,900戸 | 26.1% |
先ほどの四捨五入の関係で、大野城市と太宰府市は一戸建と長屋建・共同住宅・その他の合計がその他空き家の数と一致しません(大野城市は910戸、太宰府市は1,020戸)。
その他空き家に占める一戸建の割合は、3市とも福岡県全体(73.7%)と全国(73.9%)を下回りました。いちばん低い春日市では52.4%で、その他空き家1,850戸のうち880戸が一戸建以外の建て方です。
数字から読める点を、正直に
その他空き家の割合は、3市とも県より低い
1つ目は、空き家の種類です。3市の空き家は、県全体と比べると、賃貸用・売却用の空き家の側に寄った形をしている、と読めます。
その他空き家は「一戸建の話」だけではない
2つ目は、建て方です。3市のその他空き家は、県全体と比べて一戸建以外の割合が大きく、「その他空き家=一戸建」とひとまとめにはできない、と私たちは見ています。
同じ3市でも、形は少しずつ違う
3つ目は、3市の違いです。空き家率は春日市が11.8%、大野城市が6.2%と開きがあり、その他空き家に占める一戸建以外の割合も、春日市と太宰府市で12ポイント以上の差があります。3市をまとめて「ベッドタウン」と見るだけでは、この違いは見えません。
どの点も、統計の数字の並びから読めることで、個々の家が売れるかどうかを示すものではありません。数字がこうなった原因についても、これらの表からは言えません。
実家が一戸建ではない場合も、統計では空き家に入ります
冒頭の一言のように、実家が一戸建てでなければ空き家の話は関係ない、と考える方もいるかもしれません。ただ、上の表のとおり、住宅・土地統計調査は一戸建以外の建て方の住宅も空き家として数えていて、3市ではその他空き家のうち一戸建以外が数百戸単位ありました。
この3市で実家の話が先に延びやすい事情は、春日市・大野城市・太宰府市の実家、売る?残す?の「それでも先送りされてしまう3つの理由」の章で整理しました。遠方から管理を続けるときに先に決めておくことは遠方に住みながら実家を管理する方法に、実家の名義の話は相続登記の義務化とは?にまとめています。
相場を自分で調べる3ステップ
- 国土交通省の不動産情報ライブラリで、不動産価格(取引価格・成約価格)情報を開き、実家のある市の取引の例を見る。
- 不動産のポータルサイトで、同じ地区で売りに出ている、近い広さ・近い建て方の物件を見る。
- 手元にある固定資産税の納税通知書で、土地と建物の評価額を確かめる。
3市の窓口と空き家バンク
春日市:市の春日市が行う空き家対策のページ(更新日 令和8年10月21日)は、福岡県宅地建物取引業協会筑紫支部内の「空き家総合相談窓口」(相談無料)と、春日市シルバー人材センターによる空き家管理サービスを案内しています。相談窓口の申し込みは、市の安全安心課に申込書を出すか、筑紫支部に電話か来所で申し込む方法が載っています。
大野城市:市の大野城市空き家バンクのページがあり、問い合わせ先は生活安全課(電話092-580-1897)です。2026年11月5日に開いたときは、空き家物件情報の欄は「該当するデータがありません」の表示でした。
太宰府市:市の令和8年度空き家等の無料相談会のページ(更新日 2026年4月1日)は、市と協定を結んでいる団体が開く無料の相談会を紹介しています。司法書士による空き家と相続・遺言の相談(偶数月)と、太宰府市空家予防推進協議会のくらしの相談窓口(奇数月)で、どちらも電話での事前予約制です。申し込みは各団体に直接、とされています。
相談の受付方法や日程は変わることがあります。内容は2026年11月5日に各ページで確認したものです。最新の情報は、各市の窓口でご確認ください。
まず何から手をつけるか、3つだけ
- 実家の建て方(一戸建か、それ以外か)と、いま誰も住んでいないのか、ときどき使っているのかを、家族のあいだで言葉にしておく。
- 実家の名義と、家族のなかで誰がどう考えているかを書き出す。共有名義かどうかも確かめる。
- 相場を上の3ステップで一度調べてから、実家のある市の窓口に相談する。
まとめ:空き家の「種類」と「建て方」は分けて見る
春日市・大野城市・太宰府市の空き家は、種類で見ると賃貸用が半分以上を占め、その他空き家の割合は県全体より低い数字でした。そのその他空き家を建て方で分けると、一戸建以外の割合が県全体を上回っていました。空き家の数字は、種類と建て方を分けて見ることをおすすめします。
私たちは不動産会社ですが、売ることを前提にお話はしていません。いまは売らないほうがいい実家もあります。まずは実家がいまどの状態にあるかを、家族で確かめるところから始めてください。
あわせて読みたい
ご実家をどうするか迷っているなら、1分でできる実家診断から始めてみてください。質問に答えるだけで、いまの状況を整理できます。

