遺言書がない場合、実家を誰が相続するかは相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。その結果を書面にしたものが遺産分割協議書です。
結論から言うと、自分で作れます。決まった様式はなく、手書きでもパソコンでも構いません。ただし、書き方を間違えると法務局で受け付けてもらえず作り直しになります。つまずきやすいポイントを中心に整理します。
何のために必要か
主に次の場面で提出を求められます。
- 実家の相続登記(法務局)
- 預貯金の解約・名義変更(金融機関)
- 相続税の申告(税務署)
- 自動車の名義変更 など
逆に言えば、相続人が1人しかいない場合や、遺言書のとおりに分ける場合は不要です。
最低限これだけは押さえる5点
1. 相続人全員が参加していること
1人でも欠けていると協議自体が無効になります。前妻との間の子、認知した子、養子など、把握していなかった相続人が戸籍調査で出てくることは実際にあります。
だからこそ、亡くなった方の「出生から死亡まで」の戸籍をすべて集めて相続人を確定させる作業が先に必要です。
2. 不動産は「登記事項証明書のとおり」に書く
ここが最大のつまずきポイントです。
普段使っている住所(住居表示)で書いてはいけません。法務局で取得した登記事項証明書を見ながら、次の項目をそのまま書き写します。
- 土地:所在/地番/地目/地積
- 建物:所在/家屋番号/種類/構造/床面積
「福岡市南区中尾1-27-10」は住居表示で、登記上の地番は別の数字であることが普通です。ここを間違えると登記が通りません。
また、実家の敷地に接する私道の持分や、離れた場所にある畑・山林が漏れることもよくあります。名寄帳を取って、亡くなった方名義の不動産をすべて洗い出しておくと安全です。
3. 全員の署名と実印、そして印鑑証明書
相続人全員が署名し、実印を押します。認印では受け付けられません。あわせて全員の印鑑証明書を添付します。
実印登録をしていない相続人がいる場合は、市区町村での登録から始める必要があるので、早めに確認しておきましょう。
4. 相続人の人数分を作る
同じものを人数分作り、全員が1通ずつ保管するのが一般的です。後々の「言った・言わない」を防げます。
5. 「後から見つかった財産」の一文を入れる
協議が終わったあとに、知らなかった預金口座や不動産が出てくることがあります。そのたびに全員で集まり直すのは大変です。
「本協議書に記載のない財産が判明した場合は、○○が取得する」といった一文を入れておくと、やり直しを避けられます。
自分で作らないほうがいいケース
次に当てはまる場合は、専門家に任せたほうが安全です。
- 相続人に未成年者がいる:家庭裁判所で特別代理人の選任が必要になることがあります
- 相続人に認知症などで判断能力が低下している方がいる:成年後見人の選任が必要です。この場合、本人に不利な内容の協議は原則できません
- 名義が祖父母の代で止まっている:関係する相続人が一気に増えます
- 実家を売却する前提で分ける:換価分割の書き方を誤ると、譲渡所得税の扱いで不利になることがあります
※ 記載事項や必要書類は、提出先や個別の事情によって異なります。実際の作成にあたっては司法書士等にご確認ください。
「書き方」より難しいのは「決め方」
ご相談を受けていて感じるのは、多くのご家族が本当に困っているのは書式ではなく、「実家を誰がどう引き継ぐか」を決められないことだという点です。
預貯金は数字で割れますが、実家はそうはいきません。「兄が実家を継ぐなら、その分の代償金はいくらが妥当なのか」——この金額を決めるには、実家にいくらの価値があるのかを知る必要があります。評価額が分からないまま話し合っても、平行線になるのは当然です。
実家ラボは福岡市の不動産会社が運営しており、司法書士との連携体制で、実家の価値の把握から名義の整理までをひとつの窓口でご相談いただけます。相談は無料で、売却ありきのご提案はいたしません。


