「帰ったついでに窓を開けて、掃除をして、それで終わってしまう」
誰も住んでいない実家への帰省で、そんな心当たりのある方もいらっしゃるかもしれません。お盆や年末年始に帰省して、空気を入れ替えて、ほこりを払う。では「点検」として何を見ればいいのかとなると、手がかりがないまま帰りの日を迎えてしまうこともあると思います。
この記事では、国が空き家の所有者向けに示している管理の指針を手がかりに、帰省のときに見るところと、帰省だけでは足りないところを整理します。
国の指針は、点検を「一定の頻度」に加えて、地震や強風、大雨などの「後」にも求めています
空き家の管理については、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)の第6条にもとづいて、国土交通大臣と総務大臣が「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」を定めています。条文では、この基本指針に定める事項のひとつとして「所有者等による空家等の適切な管理について指針となるべき事項」が挙げられています(政府の法令検索サイト「空家等対策の推進に関する特別措置法」。2026年10月10日確認)。
基本指針は令和8年9月3日に最終改正されていて、国土交通省の「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」のページに掲載されています(2026年10月10日確認)。その「三」の章が、所有者向けの管理の指針です。
その章は、まず空き家の傷み方についてこう書いています。
空家等は、不具合の発生が発見されにくいことから、傷みが早く進行する傾向にある。
基本指針(最終改正 令和8年9月3日)三の2より
そのうえで、所有者等に「一定の頻度で点検を行う」ことを求め、続けて点検のタイミングを次のように書いています。
地震、強風、大雨、著しい降雪等の後には、次の①から④に掲げる点検対象となる事象が生じていないかの確認が必要である。また、強風、大雨、著しい降雪等の前には、部材の剥落など当該事象の兆候が生じていないかを確認しておくことが望ましい。
基本指針(最終改正 令和8年9月3日)三の2より
ここに「帰省」という言葉は出てきません。出てくるのは地震、強風、大雨、著しい降雪といった、天気や災害の言葉です。
帰省の日程は、仕事の休みや家族の予定で決まります。強風や大雨の翌週に合わせて決まるわけではありません。私たちはここに、帰省のついでの点検がつまずきやすい理由があると見ています。帰省のときの点検は、指針のいう「一定の頻度」の点検にはなり得ます。けれども、「強風や大雨の後の確認」と「その前の兆候の確認」は、帰省の予定とは別の段取りで考えておく必要がある、というのが私たちの読み方です。
帰省のときに見るところ──指針の①から④を、目で見る項目に置き直す
指針は点検の対象を、①保安上危険の防止、②衛生上有害の防止、③景観悪化の防止、④周辺の生活環境の保全への悪影響の防止、の4つに分けています。そのうち、外から目で見て確かめられそうな項目を抜き出すと、次のとおりです。
| 区分 | 指針が挙げている点検対象の例(抜粋) | 予防として指針が挙げていること |
|---|---|---|
| ①倒壊の防止 | 建築物の傾斜、屋根の変形、外装材の剥落・脱落、雨水浸入の痕跡、門・塀・屋外階段等の傾斜、立木の傾斜・幹の腐朽 | 定期的な通気や換気 |
| ①擁壁の崩壊の防止 | 擁壁の一部の崩壊、土砂の流出、ひび割れ等、水のしみ出し、水抜き穴の排水不良 | 定期的な水抜き穴の清掃 |
| ②健康被害の誘発の防止 | 汚水等の流出、排水設備(浄化槽を含む)の破損等、害虫等の発生、水たまりや腐敗したごみ等、動物の糞尿等・棲みつき | 定期的な清掃等 |
| ③景観悪化の防止 | 屋根ふき材・外装材・看板等の色褪せ・破損・汚損、ごみ等の散乱・山積 | 定期的な清掃 |
| ④悪臭の防止 | 排水設備周辺の臭気、排水設備の破損等・封水切れ、動物の糞尿等・棲みつき、腐敗したごみ等 | 定期的な封水の注入及び清掃 |
| ④不法侵入の防止 | 不法侵入の形跡、開口部等の破損等 | (記載なし) |
| ④立木等による破損・通行障害等の防止 | 立木の枝等のはみ出し | 定期的な枝の剪定等 |
出典:総務省・国土交通省告示「空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」(最終改正 令和8年9月3日)三の2から当サイトで抜粋して整理。2026年10月10日確認。
このほか指針には、軒やバルコニー・立木の大枝の落下や屋根ふき材等の飛散、吹付け石綿等の飛散、落雪、動物等による騒音・侵入といった項目もあります。表は全部ではありませんので、原文もあわせてご覧ください。
表のうち、予防として指針が挙げているのは、通気や換気、清掃、封水の注入、枝の剪定などです。窓を開けて掃除をするのは、このうち通気や換気、清掃にあたります。いっぽうで、左側の「点検対象」は、見て、変化に気づくための項目です。私たちは、掃除と換気だけで帰ってしまうと、こちらが抜けやすくなると見ています。
帰り際にやること──指針が「日常的な管理」の例として挙げている2つ
指針は①から④とは別に、管理不全空家等や特定空家等にならないための指針「以外にも」行うことが望ましい日常的な管理として、次のように書いています。
行うことが望ましい日常的な管理として、定期的な郵便物等の確認・整理、冬期における給水管の元栓の閉栓等が考えられる。
基本指針(最終改正 令和8年9月3日)三の2より
郵便物の確認・整理と、冬期の給水管の元栓の閉栓。私たちは、どちらも帰り際に決めておきやすい作業だと見ています。年末年始の帰省は冬にあたりますので、元栓は帰る日の作業として、家族のあいだで決めておくとよいと私たちは考えています。
正直なところ、帰省の点検だけでは足りないところもあります
指針は、所有者が自分で管理することを基本に置きつつ、自分では手に負えない部分があることも書いています。
1. 専門性を要する点検や補修がある
指針は「点検や補修等は、その内容によっては専門性を要するものもある」とし、その場合には、空家等の管理や点検、補修工事等を行う事業者、空家等管理活用支援法人等に委託をすることが考えられる、としています。指針に挙がっている「構造部材の破損等」や「吹付け石綿」のような項目は、こうした専門性を要するものにあたる可能性があります。
2. 遠方などでやむを得ない場合は、定期的な管理も含めた委託が考えられるとされている
指針は「少なくとも定期的な管理は自ら行う」ことを求めるいっぽうで、遠隔地に所在するなど、やむを得ず所有者等が自ら管理を行うことができない場合等は、定期的な管理も含めて委託することが考えられる、とも書いています。帰省の回数が限られるなら、帰省の点検に全部を背負わせない考え方もある、と私たちは読んでいます。
それでも点検が後回しになりやすいと感じること、3つ
ここからは、ご相談をお受けするなかで私たちが感じていることです。
1つめは、帰省が「点検の日」として予定されていないこと。帰省は家族と過ごす時間で、親戚へのあいさつや墓参りも重なります。家の外まわりを一周する時間が、もともと日程に入っていない場合もあります。
2つめは、前回と比べる材料がないこと。指針の点検対象は「傾斜」「変形」「ひび割れ」のように、変化に気づいて初めて分かるものが並んでいます。前回の帰省のときの様子を写真などで残していないと、比べようがありません。
3つめは、きょうだいのうち誰が見るのかが決まっていないこと。帰省の時期がきょうだいでずれていると、それぞれが「誰かが見ているだろう」と考えてしまいがちです。強風や大雨の後に誰が見に行くのかも、同じように決まらないまま季節が過ぎていきます。
実家の値段の調べ方は、別の記事にまとめています
点検を続けるうちに、このまま持ち続けるか、貸すか、手放すかを考える場面も来ます。実家のおおよその値段を手元で調べる方法は、親が元気なうちにできる実家対策5つの記事で整理していますので、あわせてご覧ください。
窓口と公的サイトのリンク
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報」:基本指針の本文(最終改正 令和8年9月3日)が掲載されています
- 国土交通省「空き家対策 特設サイト」:「空き家管理チェックリスト」が掲載されています
- 福岡市「福岡市の放置空家対策」:福岡市は平成29年4月に「福岡市空家等の適切な管理に関する条例」を全面改正・施行しています。特定空家等・管理不全空家等の説明と、市の対応の流れが載っています(問い合わせ先:住宅都市みどり局 建築指導部 建築物安全推進課 092-711-4574)
- 政府の法令検索サイト「空家等対策の推進に関する特別措置法」:第5条に空家等の所有者等の責務が定められています
制度や窓口の情報は変わることがあります。いずれも2026年10月10日に確認した内容です。ご実家のある市町村の取り扱いは、各市町村の窓口で最新をご確認ください。
まず何から手をつけるか、3つ
- 次の帰省で見る項目を、上の表から書き出しておく。全部でなくてかまいません。外まわりを一周しながら見られるものからで十分です。
- 強風や大雨などの後に、誰が見に行くかを決めておく。近くに住む親族か、委託先か。帰省の予定とは別に、家族で話しておきます。
- 帰り際の作業を、きょうだいで共有しておく。郵便物の確認・整理と、冬なら給水管の元栓。誰が最後に家を出ても同じことができるようにしておきます。
まとめ
帰省のついでの点検は大切ですが、国の基本指針が並べている点検の機会は、帰省の予定とは別のところにもあります。帰省のときは、掃除と換気に加えて、指針の①から④にある「変化に気づくための項目」を見る。帰り際の作業は家族で決めておく。強風や大雨などの後の確認は、帰省とは別に段取りしておく。私たちは、この3つに分けて考えると、限られた帰省の時間を使いやすくなると考えています。
私たちは不動産会社ですので、売ることを勧めるのが仕事だと思われるかもしれません。ただ、実家についてはいま売らないほうがいいケースもあり、その間は「守っておく」ことが大事になります。帰省と帰省のあいだの見回りをどうするか迷われたら、私たちの実家みまもり便のページもご覧ください。売るかどうか決まっていない段階でもかまいません。
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