「家は壊して更地にしとったほうが、売りやすいっちゃない?」――実家を売る話が出たとき、家族のあいだでこんな声が上がることがあります。
古家付きのまま売るか、解体して更地にしてから売るか。このページでは、どちらが高く売れるかという話はしません。土地の形や場所によって答えが変わり、この記事の中で言い切れることではないからです。
代わりに扱うのは、どちらを選んでも関係してくる「日付」です。実家の場合、税金の面で押さえておきたい日付が2つあります。1つは毎年の1月1日。固定資産税の基準になる日です。もう1つは、売った年の翌年2月15日。相続した空き家を売ったときの特別控除(いわゆる空き家の3,000万円控除)で、令和6年から加わった期限です。この2つを先に知っておくと、「解体を、いつ、誰がするか」を家族で話し合うときの材料になります。
なお、このページの法令・制度の内容は2026年10月6日に各公式ページで確認したものです。税金の扱いは個別の事情で変わりますので、ご自身の場合の判断は税務署・市区町村の窓口・税理士にご確認ください。
固定資産税の賦課期日は「1月1日」です
地方税法第359条は「固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。」と定めています。都市計画税も同じく、第702条の6で賦課期日を1月1日としています(法令検索の地方税法、2026年10月6日確認)。
そのうえで、地方税法第349条の3の2は、専ら人の居住の用に供する家屋などで政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるものを「住宅用地」とし、その固定資産税の課税標準を価格の3分の1の額に、住宅用地のうち面積が200平方メートル以下のものなど(小規模住宅用地。住居の数に応じた計算があります)は価格の6分の1の額にすると定めています。いわゆる住宅用地の特例です。
この条文が「住宅用地」としているのは、家の敷地になっている土地です。私たちはこの定義から、1月1日の時点で土地の上に家が無ければ、その年度はこの特例の前提を欠くと読んでいます。福岡市の「住宅用地申告書の提出を」のページも、1月1日に住宅を建替え中の土地について「本来であれば住宅用地に対する課税標準の特例措置は適用できません」と書いています(建替えの場合は、一定の要件を満たせば特例を続けられる申告の仕組みがあります)。
また、同じ第349条の3の2は、空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづいて勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地を住宅用地から除いています。家が建っていても、勧告を受けると特例の対象から外れるということです。この仕組みは特定空家に指定されると固定資産税が6倍に?仕組みと回避する方法で詳しく説明しています。
では、家を壊すと税額が具体的にいくらになるのか。ここは土地ごとの評価額や計算のしかたで変わるため、このページでは数字を挙げません。実家の土地の場合は、実家がある市区町村の固定資産税の担当課でご確認ください。
福岡市では、家を取りこわしたら「住宅用地申告書」を出します
解体を考えるときにあわせて確かめておきたいのが、税務の窓口への申告です。福岡市の「住宅用地申告書の提出を」のページ(更新日2025年10月24日・2026年10月6日確認)は、申告書の提出が必要な場合として、新築・増築・建替えと並べて「住宅を取りこわした、または家屋の用途を変更(事務所・店舗などから住宅、住宅から事務所・店舗など)した場合」を挙げています。
同じページによると、提出期限は1月31日(土曜または休日の場合は翌開庁日)、提出先は「所有する資産がある区役所の課税課」です。
福岡市以外の市町村にある実家の場合、申告の要否や様式、期限はその市町村が定めています。実家がある市町村の固定資産税の担当課でご確認ください。
空き家の3,000万円控除は、解体の「時期」で道が3つに分かれます
もう1つの日付は、売却の税金のほうです。国税庁のタックスアンサー「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(コード3306)(令和8年4月1日現在法令等・2026年10月6日確認)は、この特例を次のように説明しています。
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円(注)まで控除することができます。
国税庁 タックスアンサー(コード3306)
(注)は、令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人が3人以上の場合は2,000万円までとなる、という内容です。対象になる家屋は、相続の開始の直前に亡くなった方が住んでいた家屋で、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物登記がされている建物でないこと、相続の開始の直前に亡くなった方以外に住んでいた人がいなかったこと、の3つすべてに当てはまるもの(主として亡くなった方の居住の用に供されていた一の建築物に限ります)です(老人ホーム等に入所していた場合の扱いは同じ国税庁タックスアンサーのコード3307にあります)。
この特例で、売り方は次の3つに分かれています。いずれも、相続の時から売る時まで(ロの家屋は取壊しの時まで)、家屋や敷地を事業・貸付け・居住に使っていないことが前提です。
| 売り方 | 家屋の扱い | 国税庁の説明にある主な条件 |
|---|---|---|
| イ 家屋ごと売る | 家屋を残したまま売る | 売る時に家屋が一定の耐震基準を満たしていること |
| ロ 解体してから敷地を売る | 売る前に家屋の全部を取壊す | 取壊しの時から売る時まで、建物や構築物の敷地にしていないこと |
| ハ 家屋ごと売り、そのあとで耐震化か取壊し | 売った年の翌年2月15日までに、耐震基準を満たすか全部を取壊す | 令和6年1月1日以後の譲渡に限る |
ハの「売ったあと」の耐震化や取壊しを誰がするのかについて、北九州市の「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」のページ(更新日2026年7月1日・2026年10月6日確認)は、令和5年度税制改正で「譲渡後に買主が耐震改修又は除却を行う場合であっても対象とする」などの拡充がされたと説明しています。福岡市の同じ趣旨のページも、「売買契約に基づき」翌年2月15日までに耐震改修工事または取壊しを行った場合が対象になったと書いています。
3つの売り方に共通して、売る時期には2つの期限があります。1つは上の引用にある譲渡の期間の終わり、もう1つは国税庁の説明にある「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」です。ほかに、売却代金が1億円以下であること、親子や夫婦など「特別の関係がある人」に売ったものでないことなどの要件もあります。
特例を受けるには確定申告が必要で、売った物件がある市区町村長が交付する「被相続人居住用家屋等確認書」を添付します。福岡市・北九州市とも、申請書の様式を売り方ごとに3種類(様式1-1・1-2・1-3)用意しています。なお福岡市のページは、この確認書は空き家であったことを確認するための書類で、特別控除の適用を確約するものではなく、対象になるかは「住所地を管轄する税務署の判断事項」だと明記しています。
特例の全体像は空き家の3,000万円特別控除とは?実家売却で使える条件をわかりやすく解説にまとめています。
2つの日付を重ねると、「古家付きか更地か」の前に決めることが見えてきます
ここまでの2つの章を重ねると、問いの形が少し変わります。私たちは、実家の場合に先に決めたいのは「古家付きか更地か」そのものより、解体を売る前にするのか、売ったあとにするのか、そしてそれが1月1日をまたぐのかどうかだと整理しています。
- 売る前に自分たちで解体する場合(上の表のロ):解体のあと、売れる前に1月1日を迎える場合、私たちは、その年度の土地は住宅用地の特例の前提を欠くと読んでいます。福岡市なら、取りこわしたときの住宅用地申告書の手続きもかかわります。
- 家屋を残したまま売る場合(上の表のイ・ハ):売るまでのあいだの1月1日には家が建っていることになります。そのかわり、特例を使うなら、上の表のイかハの条件を満たす必要があります。ハは、福岡市のページが「売買契約に基づき」としている場面です。
どちらが有利かは、実家の土地の評価、売れるまでにかかる時間、買う側の意向などで変わり、このページの情報だけでは決まりません。私たちは、解体の時期は「売り方」と「税金」の両方にかかわるので、解体業者を手配する前に、家族と、税務署や税理士と、売り方の相談先とで順番をそろえておくほうがよいと考えています。
解体の費用や、解体するかどうかの考え方
解体そのものにかかる費用の目安や補助制度は、実家の解体費用相場はいくら?で扱っています。解体するか残すかの考え方は古い実家、解体すべき?残すべき?判断基準を整理してみたをご覧ください。
解体の話が先送りされるときの理由
実家の解体は、決めることが多い話です。私たちもご相談をお受けしていますが、話が止まるところとして、次のようなものがあります。
- 名義が親のまま:誰が売主になるかが決まっていないと、売る前の解体も売ったあとの段取りも決めにくくなります。相続登記については相続登記の義務化とは?をご覧ください。
- きょうだいで費用の分担が決まらない:解体の費用を誰がどう持つかは、家族の中でしか決められません。
- 家財が残っている:片づけの順番は実家の仏壇・遺品はどうする?にまとめています。
ただ、空き家の3,000万円控除には、売る時期の期限があります(「空き家の3,000万円控除は」の章をご覧ください)。期限を過ぎてから売る場合は、この特例は使えません。私たちは、話し合いが長引きそうなときほど、まず期限の日付だけは家族で共有しておくのがよいと考えています。
自分で確かめる3ステップ
- 固定資産税の納税通知書を手元に置く:解体した場合の税額は、本文のとおり実家がある市区町村の固定資産税の担当課でご確認ください。
- 建物の建築時期を確かめる:建築の時期は、空き家の3,000万円控除の家屋の条件の1つです(本文の家屋の条件をご覧ください)。国税庁の説明では、確定申告の際に、登記事項証明書等で建築時期などを明らかにする書類を添付することになっています。
- 周りの取引の様子を見る:国土交通省の不動産情報ライブラリで、不動産の取引価格の情報を見られます。
相談先(公式ページ)
- 福岡市・解体したときの固定資産税の申告:住宅用地申告書の提出を(提出先は資産がある区役所の課税課)
- 福岡市・被相続人居住用家屋等確認書:「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円控除)」について。受付は住宅都市みどり局 住宅部 住宅計画課で、区役所では受け付けていません。ページには、申請書の受理から交付まで通常1週間から10日間程度かかること、来庁の際は事前の電話連絡で日程を調整してほしいこと、遠方の方などは郵送申請の相談ができることが書かれています。
- 北九州市・被相続人居住用家屋等確認書:空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)。提出先は都市戦略局 空き家活用推進課で、申請から確認書の発行まで数日から10日程度かかるとされています。
- 特例の要件:国税庁タックスアンサー(コード3306)。申告先は所轄の税務署です。
福岡市・北九州市以外にある実家の場合、確認書の申請先や固定資産税の担当課は市町村ごとに異なります。実家がある市町村のホームページか窓口でご確認ください。
当社は不動産会社として、古家付きで出すか、更地にしてから出すかといった売り方のご相談をお受けしています。個別の税務相談や申告書の作成は税理士、登記の申請手続は司法書士の業務のため、当社ではお受けできません。必要に応じて専門家におつなぎします。
まず何から手をつけるか、3つ
- 相続が始まった日をもとに、3,000万円控除の売る時期の期限(「空き家の3,000万円控除は」の章)がいつになるかを家族で書き出す。
- 解体業者に連絡する前に、解体を「売る前」にするか「売ったあと」にするかを、1月1日をまたぐかどうかと合わせて話し合う。
- 特例が使えそうかどうかを、税務署か税理士に確かめる。
まとめ:先に決めるのは「解体の時期」
固定資産税の賦課期日は1月1日です。空き家の3,000万円控除は、売る前に解体する道に加えて、令和6年からは売った年の翌年2月15日までに耐震化か取壊しをする道も加わりました。だから実家の場合は、「古家付きか更地か」を決める前に、解体の時期をどこに置くかを考えておくと話が進めやすくなります。当社は不動産会社ですが、売らないほうがいい実家もあると考えています。売るかどうかも含めて、日付を確かめてから決めても遅くありません。
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ご実家をどうするか迷っているなら、1分でできる実家診断から始めてみてください。質問に答えるだけで、いまの状況に合う選択肢が分かります。
よくある質問
Q. 家を壊すと、固定資産税はいくら上がりますか?
A. 土地ごとの評価や計算で変わるため、このページでは金額を挙げていません。仕組みは本文の「固定資産税の賦課期日は『1月1日』です」の章をご覧のうえ、実家がある市区町村の固定資産税の担当課でご確認ください。
Q. 古家付きで売っても、3,000万円控除は使えますか?
A. 売り方ごとの条件は本文の表をご覧ください。ご自身の場合に使えるかどうかは、税務署か税理士にご確認ください。
Q. 税金の申告や登記も相談できますか?
A. 本文の「相談先」の章の最後をご覧ください。

